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* シャドー・スイッチ *
***
「え、私……。普通にユキトくん、好きだけどなあ」
いつもと同じ昼休み。
親友のユイといつもと同じように過ごすランチタイム中、思いがけない爆弾をユイが正面からぶっこんで来たことで、私の日常がグラつきはじまる。
「え、ユキトだよ……? あのメガネだよ?」
「いや、まあ。確かにユキトくん、メガネしてるけどさ」
苦笑しながら答えるユイに動揺は一切見受けられない。
それにしても、動揺していたとはいえ......。
自分の語彙力のなさに違う意味でびっくりする。
「みなみがボロクソ言うほど、ユキトくんは悪い人じゃないと思うけどなあ」
「……それは、ユイがユキトのことを知り尽くしていないだけで」
実にナチュラルにユイを否定するような言葉を述べつつ、サラリとマウンティングするかのような発言をする自分の浅ましさに自己嫌悪してしまう。
それでも突っ走り続けるなんて......。どこまで私は馬鹿なのだろうか。
「まぁ、そういう点は……。ちょっとやそっとで勝てるわけもないと思ってるよ。みなみは幼なじみなんだし。実際、高校生になってからのユキトくんしか知らないしね」
あくまでサラリと返すユイの言葉が解せなくて、野暮なことだと思いつつもツッコミを入れる。
「……え、と。ユイはユキトの過去とか、気にはならないの? 好きということは、相手のこと知りたいもんじゃないの?」
「うーん......。過去が気になるかならないかで言えば、気になるよ。だけど、それは今のユキトくんを構成したパーツを知りたい的な感じで。過去の所業を暴きたい、という意味ではないからひとまずは気にしないというか」
「……」
あまりにも素直に気持ちを語るユイに困惑する。
私、あれほどユキトのことをボヤいていたよね?
どこに惹かれる要素があったの?
なんて、聞きたいけど聞けやしない。
だって、それは自分自身にも言えるワードでもあるのだから。
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