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翔は私が経験したタイムリープの事を知っている。
翔に前の人生の記憶があるわけではない。
8年前のクリスマスの後、私がわかる範囲で、前の人生も含め自分の身に起きたことを翔に話したのだ。
それで嫌われてしまったら仕方がない、その覚悟で。
「しばらく考えさせて」と翔は言い、冬休みが終わる頃に「前の人生は今の玉手の人生じゃない」と言ってくれた。
「俺はまだ玉手の事をよく知らない。だけど、順番に教えて。俺も、玉手に自分の事を知ってもらいたい」
正式にお付き合いが始まったのは、高3になってからだった。
高3では、翔とも林くんともクラスは離れ、なぜか小池くんと同じクラスになった。
翔が私をぎゅっと抱きしめる。
「本当に…教会で待ち続けた俺の気持ち、わかっているのか?」
「…わかっていなかった。ごめんなさい」
翔はひとつため息をつき「戻ってきてくれてよかった」と私を抱きかかえ、ベッドに寝かせ、軽くキスをし、再び抱きしめる。
ベッドサイドには、昔貰ったミジェルとズーのストラップが飾られている。
「今日はこのまま眠ろう」
一瞬たりとも離さない、と言わんばかりに二人は抱き合って眠った。
ちゃんと二人で25歳の2月17日の朝を迎えられるように、この腕の中で目覚められますように、と祈りながら。
(おしまい)
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