ここからが、スタート

4/6
前へ
/155ページ
次へ
「えっ?もう始まるよ!葉子!?」  父にブーケを渡し、静止を振り切って、ドレスの裾をまくり、私は式場の敷地内を走り出した。  ヒールが高くて、つま先が痛い。  ―――どこかにいる、絶対いる。  ドレスの裾を時々踏み、コケそうになりながらも走った。  ―――林くんが…どこかに。  ズサッ!!  敷地裏まで来て、とうとうコケてしまった。  ヒールは、片方脱げた。  多分、膝を怪我した…痛い。  痛い。  痛い。  痛いよ… 「―――樹っ!」思わず叫んだ。 「ハコ!大丈夫?」後ろから、声がした。 「急に走り出していっぱい落とし物をしていくから、拾って追いかけるのに苦労したよ。僕も革靴だし」  その声の主は座り込む私の前に回ってきた。  樹だ。  間違いなく、私の目の前に大人になった樹がいる。  スーツを着た樹の手には、私のベールや髪飾りがあった。  私が知っている25歳の樹とは…少し雰囲気が違った。  大人びた?メガネをしているせい?まぁ中身は45歳だしね。 「樹…。なんでいるの」 「綺麗なハコを見に来たんだよ」  樹がベールを私の頭に乗せる。 「結婚おめでとう、ハコ」 「あり…がとう…」感極まって、涙がこぼれる。  メイク崩れ決定。  まぁ、既にメイクどころの騒ぎではない。  ドレスは汚れ、花嫁の膝は流血している(と思う)。
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

91人が本棚に入れています
本棚に追加