新学期

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 新学期だったので、教科書やノートは無かったのが幸いだが、筆箱やらポーチ、財布、お菓子、文庫本などの私物が散乱した。  嘘でしょ!は、恥ずかしすぎる!  なんでリュックのホック、外れているのよ!  あー…バスの定期券を出した時かなぁ。  クスクスと笑い声を聞きながら、必死に私物をかき集める。  なんで私は私物が多いのよ!  顔を真っ赤にしてリュックに私物を戻していると、「はい。向こうまで転がっていたよ」と男子生徒が私の水筒を差し出してくれた。 「あ、ありがとうございます」  水筒を受け取り、リュックに仕舞う。  もう、お母さん!  今日は始業式とHR(ホームルーム)くらいだから水筒要らないって言ったのに!  多分、この水筒が落ちて転がった音は、向こうの8組まで聞こえたのではなかろうか。 「それ…」水筒を拾ってくれた男子生徒は、私の手にあるミジェルのマスコットキーホルダーを指差した。 「それ、キミの?」 「あ、違うんです。落ちていたのを拾って…」  つい、踏んづけたことは内緒にしてしまった。 「貸して。それの持ち主、心当たりあるから渡してくるよ」  マスコットの先には小さな鍵が付いていた。 「…お願いします」と渡そうとしつつも、踏んづけたことを直接誤った方がいいかな、と躊躇した。  男子生徒はミジェルを私から取り上げ「教室入っていていいよ」と親指で3組のドアを指し、廊下奥のクラスの方向へ歩いて行った。
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