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「林 樹です。部活は吹奏楽部です」
水筒を拾ってくれた男子生徒は同じクラスだった。
楽器をやっている人はしっかりした人が多いのかな。
林くんは同じ2年生とは思えないような、落ち着いた雰囲気のある人だった。
1年生の時のクラスメイトは皆元気いっぱい、といった人が多く、私はそのノリについていけなかった。結局、親しいと言える友人も出来ないまま、新学年を迎えた。
クラス替えがあった今年こそ、友達を作りたい!と意気込むけど、どうしたものか…。
「水筒、壊れていなかった?」と、林くん。
HRが終わり、部活動のある人は皆教室を飛び出して行った。
水曜日しか活動をしない文芸部の私は、このまま帰宅する予定だ。
「あ、さっきはありがとうございます。多分大丈夫です…」
そう言ってリュックから取り出した水筒は、飲んでもいないのに非常に軽かった。
―――嘘!お茶、漏れてる!!
水筒のフタに亀裂が入っている事に気が付かず、リュックの中で横に寝かせていたため少しずつお茶が滲み出ていた。
当然リュック内の筆箱や財布はお茶に濡れ…一番最悪なのは文庫本だ。
「これ、使っていいよ」林くんは大きめのハンドタオルを差し出してくれた。
「いえ!大丈夫です!」そう言って私はリュックからハンカチとポケットティッシュを…。
「…お借りします」
私の行動を見て、林くんが笑いを堪えているのがわかった。
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