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私の止める声も聞かず、楽くんはバッと立ち上がって部屋を出ていく。楽くんを引き留めようとした手だけが行き場をなくして彷徨ってる。
「アリサ、どうしよう」
「もう付き合うなら付き合うで、さっさと答えればよかったんでは?」
「だってそしたら、動画にもっと力入らなくなる……」
「その時はその時でやめればいいんですわ」
表情を動かさずに答えるアリサに違和感を覚える。あれ? さっきは、やめるって言った時悲しそうだったのに。私の勘違い?
「ねぇ、アリサもしかしてだけど」
「アイの考えてること、間違ってますよ。何を言おうとしてるかは分かってますけど」
「でもさっきの表情は」
「癪に触っただけです。私とアイの二人きりの時間だったのに」
ツンっと澄ませた顔をして、私の視線から逃げるように冷蔵庫へと向かう。ソファから起き上がって、追いかければ怒ったような声で追い払おうとする。
「今は近寄らないでください!」
「もしかしてだけど、やきもち? 寂しかったの? アリサそんなタイプじゃないじゃん、うそ、ほんとうに? なんか、すごい嬉しいんだけど」
「茶化さないでください! 私だってこんなの嫌なんです。アイがどんどん楽くん好きになっていってるの分かってるのに、私の方が邪魔者みたいで。最初からアイと一緒にやってたのは私だったのに」
ぽつり、ぽつりと呟かれる言葉に、アリサを後ろから抱きしめる。アリサが嫉妬なんてすると思ってなかった。
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