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「楽くん、これ美味しかったから差し入れ! 楽くんと実は行きたいカフェがあって」
「いいですよ、来週とかどうですか?」
なんて和気あいあいの会話に殺意が芽生える。楽くんは私のことを好きって言ったじゃん。答えなかったけど。いや、答えようと今してるんだけど。
「アイさん、お待たせしました」
「友達?」
「カフェ友達です」
「でも、楽くんのこと絶対好きだよね」
言っちゃいけないセリフナンバーワンだと思う。何様だ、私。告白されたからって甘えて、何も言わずにただ、甘やかされてきただけの人間のくせに。
あ、自己嫌悪で泣きそう。そんなとこすら、嫌。
「嫉妬ですか? 本当に? アイさん、俺の目を見ていってくれません?」
自己嫌悪中の私とは裏腹に、楽くんは心底嬉しそうな顔をして目をキラキラと輝かせる。人差し指を立ててもう一回なんておねだりすらしている。
「もてあそばないで!」
「弄んでません。良いってことですか? そう思っていいですか?」
そっと右手を引かれて、その手をどうしても離せなかった。繋がった手があったかくて嬉しくて、また違う意味で泣きそうになる。心臓が爆発しそうなぐらい音してるし。
あんなに毎日好き好き言ってたくせに、今日は全然言ってくれないし。この策士。
「ちょっと俺の部屋は、汚いんで、えっーと、どうしよう」
「マスターのとこ」
「そうですね、そうしましょう!」
パッと手を離されて、少し残念な気持ちになる。楽くんが店の中に顔だけ入れて大声を張り上げた。店内にいたお客さんたちが振り返ってるし、お母さんはニコニコと笑ってらっしゃる。付き合うにしても、この空気感耐えられるのかな私。
「ちょっとでかけてきまーす」
私の右手をもう一回握りしめて、そのままスタスタと歩き始めてしまう。私は、うるさいくらいの胸を押さえつけるのに必死で。
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