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「マスター! ココア二つ! あとあれお願いしても良いですか?」
「はいはい、よかったね」
マスターは全て分かっています、みたいな顔で冷蔵庫を漁っている。都合よく、他のお客さんは少ないみたいだ。
いつもの私たちの特等席。一番奥の影になってるボックス席に、二人で座る。
「返事をもらえるって思ってていいんですよね? 俺の先走りじゃないですよね?」
座ったかと思えば、楽くんがすぐに言葉を発する。私はうん、とも、ううんとも言えなくて乾いた息だけが唇から吐き出された。
「あのね、私。楽くんに、好きって」
「あ、待ってください。これみてほしいんです」
言いかけた私の言葉を遮って、何か紙を一枚ポケットから取り出す。
「好きだからこそ、役に立ちたくて。ただそこにいる存在で居たくなくて」
真剣な顔で差し出された紙には、私の動画に合いそうなサムネイルのサンプル。それと、たくさんのお菓子のサンプル画像だった。
「なにこれ、」
「動画に使える技術と、動画に使えるお菓子です。俺が作れるようになれば幅が広がるかなって思って。だから、俺と付き合ってくれませんか。動画作成も手伝えます、美味しいお菓子も作れます、アイさんの弱いとこもかわいいとこも、いっぱい知ってます」
「知ってるよ、好きって言われた日からずっと気になっちゃって、どんどん好きになっちゃって。動画に身が入らなくなってて」
「俺と付き合えばお得ですよ。公私共にパートナーになれます。アリサさんも居ますけど」
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