食べる系動画配信者、アンチ(?)と恋に落ちます

15/16
前へ
/16ページ
次へ
「マスター! ココア二つ! あとあれお願いしても良いですか?」 「はいはい、よかったね」  マスターは全て分かっています、みたいな顔で冷蔵庫を漁っている。都合よく、他のお客さんは少ないみたいだ。  いつもの私たちの特等席。一番奥の影になってるボックス席に、二人で座る。 「返事をもらえるって思ってていいんですよね? 俺の先走りじゃないですよね?」  座ったかと思えば、楽くんがすぐに言葉を発する。私はうん、とも、ううんとも言えなくて乾いた息だけが唇から吐き出された。 「あのね、私。楽くんに、好きって」 「あ、待ってください。これみてほしいんです」  言いかけた私の言葉を遮って、何か紙を一枚ポケットから取り出す。 「好きだからこそ、役に立ちたくて。ただそこにいる存在で居たくなくて」  真剣な顔で差し出された紙には、私の動画に合いそうなサムネイルのサンプル。それと、たくさんのお菓子のサンプル画像だった。 「なにこれ、」 「動画に使える技術と、動画に使えるお菓子です。俺が作れるようになれば幅が広がるかなって思って。だから、俺と付き合ってくれませんか。動画作成も手伝えます、美味しいお菓子も作れます、アイさんの弱いとこもかわいいとこも、いっぱい知ってます」 「知ってるよ、好きって言われた日からずっと気になっちゃって、どんどん好きになっちゃって。動画に身が入らなくなってて」 「俺と付き合えばお得ですよ。公私共にパートナーになれます。アリサさんも居ますけど」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加