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手を差し出しながら、どうですか? と言わんばかりのドヤ顔をする。好きって言われた日から、もう抗えなくなるくらい好きになっちゃってるんだから。
例え、そんなことできなくてもその手を取るに決まってるでしょ。
でも、言葉にできなくて、心の中でだけ悪態をつく。そっと手を握り返せば、心底嬉しそうな顔で笑ってから私の手を離した。
そのまま席から離れていく楽くんの背中を、視線で追う。マスターとこそこそと話してから、ケーキが盛られたプレートを持ってきた。
「これ、アイさんのために作りました」
私の前に置かれたプレートには、私が大好きなケーキばかり盛り合わせにされている。あの日のレアチーズケーキとか、ガトーショコラとか、フルーツタルトとか。
ありがとうを言おうとして、顔を上げれば悪戯っぽい顔をする楽くん。嫌な予感がしつつも、じっと見つめれば……
ちゅっと軽く唇を塞がれる。慌てた私を見ておきながら、ほっぺた、おでこ、鼻と次々と軽いキスを落としていく。
「ずっと待ってたので、これくらいは許してくださいね」
耳元でそっと囁かれる言葉に、頬がカァッと熱を持つ。言い返そうともう一度唇をひらけば、口の中にチョコレートケーキを押し込まれる。
口の中に広がる甘い幸せな味に、顔がとろける。
「いつもそんな幸せな顔で食べててください。ケーキも喜びますから。これからは、これくらい甘い生活させますから。覚悟しておいてくださいね」
もうすでに甘さで、クラクラしてる。
<了>
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