未知の世

4/6
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/369ページ
「最近のことだが、3層にある違和感がある」 「違和感?」 話を振ったのはタリスだった。 「違和感なんかあるか?」 「3層は探索機とかあるからあんまり誰も近寄らないよね」 「私は定期的に船内を見回っているのだが、3層に何か潜んでいる気がする。 初めはただの違和感だが、時間を重ねるごとに核心に近づいた。 この舟に何かいる」 「急に怖いこと言わないで!」 「確かに最近お風呂に入っている時に物音を感じます。 王星を出た辺りからです」 言われると全員が何かしろの違和感を持っていた。 「確かに俺の心に声が聞こえることもある。 疲れているわけじゃねえのか」 全員が訝し気に思う中、1層の光が消える。 「急にどうした!?」 「分かりません。 私は……」 AIにすら現状は理解出来なかった。 「ついにバレたか」 暗くなった瞬間に声が響く。 「誰だ!?」 「王星では世話になったね。 あんた達が面白いからついてきたんだ」 「まさかお前はアーク!?」 「その通り。 いつの間にか同乗させてもらったよ」 違和感の正体。 それは暗闇に生きるシャドー族、アークだった。 「一体何がしたい? もう私達は王星に戻れないんだぞ」 「俺も虹のジュエリアスと同じさ。 新しい星に行きたいだけだ」 「お前との契約は王星で終わったはずだ。 それに何で今まで隠れていた?」 「俺は自分の種が嫌いなんだ。 シャドーの連中は陰湿で気が滅入る。 隠れてたのはあんた達に迷惑かけないようにしたかっただけだ」 「そうか。 でもお前達は光が駄目じゃないのか?」 「俺は暗い所になら瞬時に移動出来る。 この舟の下層は常に暗いからそこにいたんだ」 「なら光の扱いに気をつけないといかんな。 アークの力も借りたいんだがいいか?」 「もちろんそのつもりさ。 そこにいる機械族が俺の情報を持っているんじゃないか?」 「私のことか?」 アークがキー坊のことを言う。 「だが本人から聞いた方が確実だ。 キー坊でも把握出来ていないこともある」 「そうか。 じゃあまだこの場所を暗くしておいてくれ」 暗闇に包まれた1層にてアークの声が響く。 「キサラギさんなら少し分かるんじゃないか? あんたは北星のコロシアムで同種のムリクを倒したんだろ?」 「ムリク?」 王星のコロシアムのことはビル以外知ることはなかった。 ここでルクを手に入れた方法をキサラギが話す。 「別に俺はあんたを恨んでない。 あいつはシャドー族の中でも欲に目が眩んでた。 いつかはああなる運命だった」 「その言葉で救われる」 「しかし博士の異能は戦いにおいても優秀だ。 正直私達などその気になれば……」 アリウスの発言にクルー達が目を見合わせる。 それは暗にキサラギはいつでも自分達を殺せる。 そう言わんとしていた。 「博士はそんなことしないぜ!」 アリウスの心を読んだガッシがフォローする。 しかしキサラギの人から外れた異能はいつしかクルーの恐怖の対象になっていた。
/369ページ

最初のコメントを投稿しよう!