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過去の思い出 ~Pinky swear~
(星夜side. )
僕らが出会って10ヶ月の月日が経った。
桜が満開になり散り始めた頃、朝陽の誕生日がやってきた。
その日は二人で誕生日のお祝いをしようと、はじめて会話を交わしたあの場所へ向かった。
その日はとても寒く、空から天使が舞い降りる。
桜と雪が一緒に舞う、奇跡のような日。
真っ白な絨毯の上に桜のハートの花びらが落ち、幻想的な世界をつくっていた。
キミに出会った奇跡が今までにないコトバにできない時間や世界をたくさん見せてくれた。
今日もそう。
こんなに傍にいるのに……僕はキミに手を伸ばすのが怖かった……。
だから僕はいつも距離を取っていたんだ。
そしたらキミは……
「ねぇ、私と心友になってくれない」と今にも泣きだしそうな笑顔で僕に手を差し伸べてくれた。
僕はその言葉が嬉しくて、力の加減を忘れてキミの手を握り返した。
キミの手は冷たく震えていた。
だから僕はキミの手を両手で優しく包み込んだ。
僕はもう一度その言葉を聞きたいなと思い「え?」と聞き返すと
「私と心友になってくれない。私に星夜の時間をくれない」とキミは真剣な顔をして告白のような言葉を言った。
「朝陽の時間を……未来を僕にください」
僕はそんな言葉を返したのを覚えている。
キミと出逢った奇跡が、僕のモノクロだった世界をカラフルな世界に変えた。
同じ場所に行っても同じ景色を撮っても僕らが写し出す世界は全く違っていて、それぞれの個性というカラーが輝いて見えた。
そしてそれぞれの色が混ざり合って世界の色が変化していく。
見たこともないような色たちが生まれ、進化していく。
片方がいないだけで色数は減ってしまう、世界の色が欠けてしまう。
僕たちはお互い、いなくてはならない存在になっていた。
そんな時、守れないのはわかっているけど……キミと約束をした。
二人の約束……
これから先も
『僕らがいる、僕らが見ている世界を捉える』
当たり前の世界なんてないから出逢ったあの場所で
これからもずっとずっと
僕らだけがいる、僕らだけが見ている世界を捉え続けようって約束したよね。
本当はその約束は続かないって知っていたのに……。
その時、心から願ったんだ。
ずっとこの時間が続いてほしいと。
だから僕は「これからもずっとこの時間を大切にしようね」と言った。
僕はココロの奥底から願ってしまう。
叶うはずがないとわかっているのに。
この時間が永遠に続けばいいなと祈ってしまう。
「うふふ。急にどうしたの? センチメンタル?」
キミは笑いながら、僕の背中をポンポンと叩く。
その時はずっとずっとこの時間が続くと願っていた。
その時は世界がキラキラと輝きすぎていて、キミに伝えることができないでいた。
「来年も同じ場所で私たちがいる、私たちが見ている世界を捉えようね」
キミは何も知らないままそう言った。
そして僕は「うん。そうだね」と答えた。
キミは約束という意味で指切りをしようと小指を差し出すから……
「えへへ。指切りなんて恥ずかしいよ。だからさ、フィスト・バンプにしない?」と言って、僕はギュッと握った拳を前に出した。
本当はこれっぽっちも恥ずかしくはない、指切りしたかった……けど、約束なんかできない……だから指切りはできないんだ。
それからすぐ体調が悪化して……僕は入院をすることになった。
退院して学校へ行くと、キミたち家族にあった不幸を聞かされた。
キミだけ生き残り、精神的ショックのあまり一部の記憶がなくなってしまったそうだ。
そしてキミはこの街からいなくなっていた。
朝陽の中にもう僕はいない。
それでもまたいつか会えると信じていた。
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