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桜の妖精
(星夜side.)
キミはじーっと僕を見つめ続けるから
「そんなにじーっとみないでよ」と言うと
「雪のような綺麗な髪色だね、それに空みたいな瞳もステキ。雪の妖精さんかと思ったよ」
とはじめて言葉を交わした時と同じ言葉を言った。
やっぱりキミは昔のままだね。
雪が降ってこんなにも寒いというのに……
キミのそのコトバで春の温かいそよ風が吹いたように感じた。
朝陽は名の通り、太陽のような優しくあったかい日差しのようなぬくもりと、太陽のようなキラキラな眩しい笑顔をみせてくれる。
昔から変わらない、僕の心は懐かしさと嬉しさでいっぱいになった。
「ふふふ。お姉さんは子供みたいですね。雪ではしゃいだり、思ったことを口に出したり」
「あ、ごめんなさい。あまりにも綺麗だったから、つい」
「あはは。そんなにドストレートに言われると僕が照れちゃうよ」
「私も誰かにこんなこと言ったのははじめてだよ」
「そっか。お姉さんは誰にでもそういう感じなのかと思っちゃった! それよりお姉さん、手先が真っ赤だけど大丈夫?」
「え? ああ。平気、平気!」
「お姉さんが平気でも手が平気じゃないかもしれないよ。だから僕の手袋をどうぞ。ついでにマフラーもどうぞ」
と僕は身に着けていた手袋をキミの手にはめ、同じく身に着けていたマフラーを背伸びしながらかける。
キミに近づくと優しいお花のような香りがしてきてもっと近くでキミの香りを温度を感じたいと思い、抱きしめたくなってしまう。
感情で動いてしまったら今日の再会が二度とないものになってしまう。
その想いを抑えるように手をギュッと握る。
「ありがとう。でもそれじゃあアナタが寒くない?」
「へへ! だって僕は雪の妖精だよ? だから寒くなんかないよ!」
僕は妖精のフリをしようとクルっと回ってから両手を広げてみせる。
「本当に雪の妖精さんに見えて来た! 誰にも言わないから、本当のこと教えて!」
とキミは無邪気な笑顔で首を傾げながら唇に人差し指を添え、内緒のポーズをしながらウインクをする。
「残念! 僕はふつーの男性です。それよりキミの方こそ、桜の妖精さんじゃないの?」
「桜の妖精さん? 私が? 少年! アナタは面白いことを言う!」
「だって桜の花のような髪色だし、瞳も桜色っぽいよね? キミこそ雪を楽しむ桜の妖精さんでしょ?」
「ふふふ! バレてしまったか、雪の妖精よ! そう、私は桜の妖精さ! こんな時期に雪が降るなんて滅多にないからね、はしゃいでしまったんだよ!」
キミは仁王立ちをして声色を変えて桜の妖精を演じてみせる。
そして昔と変わらずのくしゃくしゃの満面な笑みをみせる。
これがキミとの再会。
それから僕らの時間がまた動き出した。
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