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 11月の動物園は涼しく過ごしやすい。私と先生は楽しく動物を見て回っていた。すると、 「小石川先生だー!」  小学生ぐらいの男の子が先生に向かって走ってきた。 「あら、あれは……七歩さん、ちょっと話してきていいですか?」   「はい、どうぞ」    先生は男の子と少し話すと、私の方へ帰ってきた。 「すみません、あの子は私の家庭教師の生徒さんでして」  「先生、家庭教師もやってらっしゃるんですか?」 「そうなんですよ。そういえば話してませんでしたっけ。涼くんもそうです。涼くんが高校生の時、家庭教師をしていました」  なるほど、涼くんとはそういう出会いなんだ。  「最近はYouTubeの収益だけで生活できるぐらいなので、家庭教師はやめようかと思っていたのですが、引き止められてしまいまして、結局続けているのです」 「人気なんですね、先生」 「ええ。ですが……続けていて本当にいいのかなあ、と思いますよ」 「どうしてですか?」 「さっきの子、学校が苦手だそうで、不登校状態なんですよ」 「え、そうなんですか」 「はい。なぜか私には懐いてくれているので、どうか家庭教師を続けてくれと頼まれてるわけです」 「いいことじゃないですか。不登校の子に家庭教師として勉強教えるのなんて、素晴らしいですよ。どうして悩んでらっしゃるんですか?」 「だって、私、勉強全然教えられないんですよ」 「え!?」 「勉強教えるの苦手なんですよ。だから、ただ遊んでしまって……それに私は問題解決できませんし」 「解決? というと?」  私は首を傾げる。
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