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「おっと、私ってば、なんて湿っぽい話をしているんでしょう! 忘れてください!」  小石川先生は唐突に大声で言った。 「いえいえ。大丈夫ですよ」 「七歩さんは優しいのですね。とりあえず私は、まだ発明家として売れてないですし、家庭教師も頑張りますよ。そろそろお昼ですし、何か食べましょうか」 「そうですね」  動物園の中にあるレストランで昼食を取った。先生はびっくりする量の料理を平らげていた。  その後もしばらく動物を見て回ると、お土産屋さんがあった。 「先生、千里ちゃんにお土産買っていいですか? 千里ちゃんカピバラ好きなんですよ」  私はカピバラのぬいぐるみを眺めて言った。 「もちろんいいですよ。私も涼くんにお土産……って、涼くんは今日のお土産もらって喜ぶでしょうか……?」  先生は珍しく自信なさげにつぶやいた。 「そうですね……」  私も考えてみた。もし、小石川先生と千里ちゃんが動物園デートをしたとして、お土産をもらいたいか?  私ならいらないな。 「微妙ですね……私が涼くんの立場なら、いらないかも……」 「そうですね。涼くんは動物が好きなわけでもないですし、今日はいいでしょう」  ん?じゃあ私が今日千里ちゃんにお土産買うのはいいんだっけ?少なくとも千里ちゃんは小石川先生のことを発明家として好きなだけだから大丈夫だよね。  そもそも、こうやって先生と出掛けているなんてまだ気恥ずかしくて言えないし、小石川先生と動物園に行ったことは言わずにカピバラグッズだけあげたいところ。 「七歩さんも自分用にお土産はどうですか?」 「そうですね、私はナマケモノにします」  私はナマケモノのぬいぐるみを手に取った。 「じゃあ私もナマケモノを買います。七歩さんと出かけた記念が欲しいですから」
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