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12月になり、小石川先生との二度目のデートの日がやってきた。先生はグレーのポンチョのようなコートを着ていた。先生は初回のデート以降も、ちょこちょこ画材屋に顔を出してくれているが、その時はうんと派手な格好をしている。デートの時は派手になりすぎないように気をつけてくれているようだ。
「近くで面白そうな催しがあるので行ってみましょう」
先生はチラシを見ながら言った。チラシはポストに入っていたそうだ。
チラシに書いてあった地図を見ると、催しの会場は歩いて行ける場所にあるビルの一室だった。
受付のお姉さんから、来場者へのプレゼントとしてお菓子の詰め合わせをもらった。先生はとても喜んでいた。
会場にはステージのようなものがあり、30人ほど座れる椅子が並べてあった。すでに半分くらい席が埋まっている。
先生は張り切って最前列の椅子に座ると、私に隣に座るように促した。
「……先生、これ、なんの催しですか?」
先生はもらったお菓子を頬張りながら答えた。
「面白い商品の実演販売だそうですよ」
「実演販売?」
首を傾げていると、アナウンスが流れて、男の人がステージ上に現れた。
後ろのお客さんがわっと歓声をあげた。
男の人が話を始める。
「皆さんこんにちは。来場者プレゼントのお菓子は受け取られたでしょうか? 受け取った方は元気よく手を上げて返事をしてください」
「はい!」
「はい!」
「はい!」
観客の人たちがやたら元気よく返事をした。
先生も元気よく「はい!」と返事をした。
なんだろう、この空気……
先生はいつも元気だから違和感ないが、他の観客の人たちまでこのテンションなのは、なんだかおかしい。
「それでは今から一番元気よく返事をした人にさらにお菓子をプレゼントしますよ!」
「はい、はい、はーい!」
小石川先生はとても元気よく返事をしたので、お菓子をもらった。
これって、まさか……
「では、今日のメインの販売会に移りましょう。今日の商品は、この開運数珠です。いつもは二十万円のところを特別に十万円です!」
これは……!
親戚の叔母さんもひっかかったことがある……
『ハイハイ商法』詐欺!!
「はいはいはーい!」
私は手を挙げた先生を大急ぎで止めた。
「先生! だめです! ここから出ましょう!」
「え? なんでですか?」
「とにかく出ましょう!」
先生を引っ張って会場を後にした。
「どうしたんですか? 七歩さん」
会場の外に出たあと、先生が聞いてきた。
「先生、あれ詐欺ですよ。いわゆる『ハイハイ商法』ってやつです!」
「ええーー!?」
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