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「いいですか、先生。今のは詐欺です。ほら、少し検索したら事例がこんなに!」  適当なカフェに入り、私はスマホの画面を先生に見せながらハイハイ商法について説明した。 「無料のプレゼントで客を集め……元気よくハイハイと返事をする練習を観客にさせ、高揚した観客に高額な商品を売りつける……なるほど、さっきの会場そのままですね……」  先生はパンケーキを食べる手を止めて、スマホ画面をしばらく眺めたあと、頭を抱えた。 「私、七歩さんを詐欺の会場に連れて行ってしまったのですね! なんてことを……! 申し訳ありません、七歩さん!」 「いえ、被害はないですし、それはいいですけど……気をつけてくださいね、先生。とか、どう考えても詐欺ですから」 「はい、気をつけますね! しかし、七歩さん『たいしたことないものを十万円で売りつける』って、私も普段YouTubeでやってますが……」 「え!?」  い、言われてみれば……  そうか、先生普段十万円で発明品売ってるから、値段に違和感持たなかったのね。 「ま、まあ先生のチャンネルの視聴者さんは冷静ですし……勢いあまって購入して後悔している人はいないですから、大丈夫ですよ」 「たしかに、『いらない』ってコメントだらけですしね。皆さん辛辣だなあ、と思っていましたけど、詐欺商法チャンネルにならずにすんでいたのはそんな皆さんのおかげなんですねえ」  先生はしんみり言った。  たしかに、もし先生のYouTubeチャンネルのコメント欄が『十万円なんて安いですね、買います!』ってコメントで溢れていたら、超怪しいチャンネルになり、小石川先生は世間から詐欺師と認識されていただろう。絶妙なバランスで成り立ってるのね、あのチャンネル……
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