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「先生、ケーキセットですよ」 「はい」  先生は大人しくケーキを口に運ぶ。 「おいしいです!」  先生は一瞬だけ元気になったが、すぐため息をついた。 「涼くん……ここ、ウイスキーってあります?」 「いえ、喫茶店なので、お酒はさすがに」 「ですよね。ああ、お酒が飲みたいです。失恋しちゃったら、お酒でも飲まないとやっていられませんね……藍華のところにでも行こうかな」 「藍華さんのところに? 今から?」 「ケーキはちゃんといただきますよ」 「僕も一緒に行っていい? もうすぐバイトの時間終わりだし」 「ええ、いいですよ」  元カノのところに行って、さらにお酒を飲むなんて、焼けぼっくいに火がつきかねない。せっかく七歩さんとの恋が終わったというのに。  新しい恋なんて、させない。  僕はいそいそと支度して、先生と店を出た。  外は暗くなり始めていて、街の至るところで電飾が光っていた。
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