17

1/2
前へ
/143ページ
次へ

17

 救急車は本当にすぐやってきた。  救急隊の人に、事情を説明する。  千里ちゃんのママは、担架で救急車に運び込まれ、私と千里ちゃんも付き添いで救急車に乗った。  救急車に乗って病院に向かう途中で千里ちゃんのママは意識を取り戻した。私も千里ちゃんも、ひとまず安心した。しかし失神した原因はきちんと調べた方がよいとのことで、そのまま病院に向かうことになった。  私と千里ちゃんは、救急の待ち合いで検査が終わるのを待った。お互いの手を握って、不安な時間をやり過ごした。  いろいろ検査が行われたあと、千里ちゃんのママと私と千里ちゃんの三人で検査結果を聞いた。特に大きい問題はなく、疲れが出たのだろうという話だった。 「たしかに、今月はやることが多くて、ちょっと疲れが溜まっていたの」  千里ちゃんのママ曰く、12月に入ってから大忙しだったらしい。千里ちゃんの次の個展の計画、東京のアウトサイダーアーティスト展の準備、大掃除、クリスマスとお正月の準備に加えて、千里ちゃんの見合い相手を探そうと走り回っていたそうだ。  千里ちゃんのママはパワフルとはいえ、もうすぐ還暦だ。少し無理があったのだろう。  栄養剤の点滴を受けて、そのあと問題がなさそうなら、家に帰ってよいとのことだった。
/143ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加