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 小石川先生は救急外来のある小さな医院に入った。僕はお医者さんから診察を受けたあと、しばらく医院のベッドに横たわっていた。  ようやく吐き気が落ち着き、僕は身を起こした。ベッドの横の壁際に先生が座っていた。 「大丈夫ですか、涼くん」 「うん、だいぶ落ち着いたよ」 「それはよかったです」  ふと先生の服装に目が行った。黒のスーツに黒の蝶ネクタイ姿だった。朝から姿を見ているが、ずっとポンチョを着ていたので気がつかなかった。髪色もいつもは派手な色なのに、今日は黒髪だった。 「先生今日かっこいいね」 「え? これですか? レストランでディナーの予定だったので。レストラン以外の場所でこの格好は恥ずかしいので隠していました。しかし涼くんを運ぶのにポンチョを着ていては不便ですからね」  黒のスーツってどこで着ても恥ずかしくない服だと思うけど。先生の恥ずかしいの基準ってよくわからないや。 「先生、七歩さんは? 結局何があったの?」 「千里さんのお母様が倒れてしまったそうで、救急車を呼んで付き添っていたそうです。七歩さんも動揺していて連絡が遅れたみたいです」 「ということは七歩さんもこの病院にいるとか?」 「いえ、こことは別の病院のようです。七歩さんはもう帰宅しているそうですし」 「そう……まあよかったじゃない。振られてなくて」 「ええ、お騒がせしました」 「ほんとだよ。ねえ、先生……僕、もう先生の助手辞めるよ」 「ええーっ!? どうしたんですか急に?」  先生は目を見開いて叫んだ。
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