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慌ただしくクリスマスイブが終わり、翌日。私は画材屋での通常業務に戻っていた。
「そう、昨日のデートだめになっちゃったのね。大変だったわね」
クリスマスイブの出来事を私から聞いた店長が、同情した様子で言った。
「はい。しかも先生急に動画制作が忙しくなっちゃったそうで、次に会うのは年明けです」
先生とは、昨日の深夜電話で話した。クリスマスデートがだめになっちゃたことを、先生はちっとも怒っていなくて、ありがたかった。
「そう、年末年始って何かと忙しいもの、しょうがないわね」
そんな話をしていたとき、店にお客さんがやってきた。
「いらっしゃいませ……って、涼くん!?」
目の前に立っているのは涼くんだった。
しかし、髪の毛がだいぶ短くなっていた。メイクは相変わらずしているけど。
「こんにちは、七歩さん。昨日デートをすっぽかして小石川先生を泣かせてくれてどうも」
涼くんは単刀直入にぐさっとくることを言った。
「うっ……ごめんなさい」
これに関しては、もうぐうの音も出なかった。千里ちゃんのママが倒れたという緊急事態だったとはいえ、もっと早く小石川先生に連絡するべきだった。
「今回に限っては許すけど、今度同じことしたら許さないからね。僕の代わりに先生のこと幸せにしてくれなきゃ、僕が浮かばれないし」
「涼くんの代わり? どういうこと?」
「辞めたんだ、先生の助手。それから空子さんの喫茶店も」
「ええっ!?」
私も、横にいた店長も驚いた。
「な、なんでそんな急に辞めたの!?」
「なんとなくわかるでしょ。察してくれない!?」
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