20

2/2
52人が本棚に入れています
本棚に追加
/143ページ
「そ、そんなこと言われても……」  私が混乱していると、 「涼くん、やっぱり好きだったんでしょ。先生のこと」  横から店長が言った。 「ふん。それじゃ」  涼くんはそう言って、店から出ていった。 「涼くん……」  先生に対して思い入れが強いとは思っていたけど、助手辞めちゃうほどだったんだ。涼くんが急に辞めちゃったから、先生は動画制作が忙しくなったんだね。 「なんだか、悪いことしちゃったな……」  私はつぶやいた。 「そうね。もう今は悪者になってあげるしかないわね」  店長も私に同意するように言った。 「私も、ちょっと前まで、あんな感じの立場だったもんな……」  千里ちゃんと小石川先生が結婚するかも、なんて話を喫茶店でしていたとき、涼くんと私は同じ立場だった。  それが、今は……  涼くんには、掛ける言葉が見つからなかった。  私に何を言われても、面白くないだろう。  私はただ黙って涼くんの言葉を受け取るしかできなかった。 「ところで七歩ちゃん、先生とはデートはしてるけど、まだ付き合ってるわけではないんだっけ?」  店長が聞いてきた。 「はい、まだデートだけです」 「どう? デートしてみて。なにか変わった? 告白されたとき、よくわからないって言ってたけど」 「うーん……デート自体は楽しいと思うんですけど……その……先生と付き合うっていうのが、想像つかなくて……」 「あらあら、先生も前途多難ねえ……」  そんな悠長なことを言っていたら、びっくりするようなことが起きた。
/143ページ

最初のコメントを投稿しよう!