52人が本棚に入れています
本棚に追加
/143ページ
「そ、そんなこと言われても……」
私が混乱していると、
「涼くん、やっぱり好きだったんでしょ。先生のこと」
横から店長が言った。
「ふん。それじゃ」
涼くんはそう言って、店から出ていった。
「涼くん……」
先生に対して思い入れが強いとは思っていたけど、助手辞めちゃうほどだったんだ。涼くんが急に辞めちゃったから、先生は動画制作が忙しくなったんだね。
「なんだか、悪いことしちゃったな……」
私はつぶやいた。
「そうね。もう今は悪者になってあげるしかないわね」
店長も私に同意するように言った。
「私も、ちょっと前まで、あんな感じの立場だったもんな……」
千里ちゃんと小石川先生が結婚するかも、なんて話を喫茶店でしていたとき、涼くんと私は同じ立場だった。
それが、今は……
涼くんには、掛ける言葉が見つからなかった。
私に何を言われても、面白くないだろう。
私はただ黙って涼くんの言葉を受け取るしかできなかった。
「ところで七歩ちゃん、先生とはデートはしてるけど、まだ付き合ってるわけではないんだっけ?」
店長が聞いてきた。
「はい、まだデートだけです」
「どう? デートしてみて。なにか変わった? 告白されたとき、よくわからないって言ってたけど」
「うーん……デート自体は楽しいと思うんですけど……その……先生と付き合うっていうのが、想像つかなくて……」
「あらあら、先生も前途多難ねえ……」
そんな悠長なことを言っていたら、びっくりするようなことが起きた。
最初のコメントを投稿しよう!