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小石川先生との三回目のデートでは、当然千里ちゃんのお見合いの話題になった。千里ちゃんはこのデートの前日にお見合いしたが、なんとか会話はできたらしく、今はお相手の返事を待っているそうだ。
「先生ったら、いつの間にか千里ちゃんのお見合いに手を貸しちゃって!」
今日は無難にランチデートをする予定だ。街中で良さそうな食事処を探し歩きながら、私は先生に言った。
「千里さんがお見合いなんて、結構なことじゃありませんか。七歩さんと千里さんがあまりべったりだと、デートに支障が出てしまいますからね」
「!!!」
そうか、私が千里ちゃんに構ってデートをすっぽかしてしまったのがきっかけで、先生も千里ちゃんのお見合いに乗り気になってしまったのか!千里ちゃんのママと小石川先生がタッグを組んだ千里ちゃんお見合い大作戦……想像するだけで強力!千里ちゃん、まじであっという間に結婚するかも!!
「だけど、どうして七歩さんは千里さんのお見合いをそんなに嫌そうにしているのですか? 千里さんが結婚することって、七歩さんにとって、そんなに悪いことですか?」
「え、そ、それは……」
「もしかして、 七歩さん本当は千里さんと結婚したい、とかですか!?」
「違います! そういうことではないです! ただ……千里ちゃんの方が先に大人になるみたいで、なんだか寂しく感じるというか……ほら、私なんて先生とまだこうやってデートしているだけで、恋愛らしい恋愛すら……」
「え? もしかして、七歩さんって、今までに彼氏とかいなかったのですか? 私が初デートってことです?」
「そうですけど……」
「あらあら、それで千里さんにいろいろ先越されそうで、焦っているのですねー?」
先生は面白がるように、にこーっと笑った。
「なっ、先生だって、今までデートで失敗ばかりしていたんでしょう? 私と似たようなもんでしょうに!」
「そんなことないですよ? 私は『デートが下手』なのであって、彼女はいましたもん」
「え!?」
どういうこと? と先生を見つめた。
「服装が派手過ぎて外でデートしてくれなかったというだけで、家で会う形でお付き合いした人は何人かいましたから」
「ええー!?」
小石川先生って、「最初のデートでいつも失敗して、彼女いたことない人」だと思ってたのに!
なんだろう、先生が急に遠くにいる感じがする。
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