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 そして、とうとうこの日がやってきた!  千里ちゃんと小石川先生の晴れ舞台、『大規模アウトサイダーアーティスト展東京2024』!  私、小石川先生、千里ちゃんと千里ちゃんのママの四人で、新幹線に乗り、はるばる東京へ。 「おおー! すごいですね!」  先生は会場に入るなりはしゃぎだした。 「はい、すごいです!」  さすが、大規模な作品展というだけあって、広い会場に様々な作品が展示してある。絵画、彫刻、工芸……色合いも作品のサイズも様々だ。全部見て回るには、数日かかるのではないか思うほどの展示数だ。  「作品数もすごいですけど……なにより、先生、今日すごく派手な格好をしているのに全然浮いてないですよ! 会場中カラフルですもん」 「そうですね! もっと派手にすればよかったですね!」  「七歩ちゃんと先生はお二人で会場回ってきて。私と千里はインタビューの打ち合わせがあるから」  と千里ちゃんのママが言ったので、私と先生は二人で会場を見て回った。千里ちゃんの展示スペースは広く取られていたので、すぐに見つかった。千里ちゃんのあとは、先生の展示を見ようという流れになった。 「先生の展示スペースはどこでしょう?」 「えっと……たしか……」 「あっ、先生! あれ、『小銭ばらまきロボット』じゃないですか?」  会場の床で、派手なアートが施されたロボット掃除機のようなものがくるくる回っているのが見えた。 「ああ、あれですね!」 『小銭ばらまきロボット』の周辺に小石川先生の展示スペースがあった。  小石川先生の展示作品は…… 『ハイハイ商法再現装置?』  もぐら叩きのような、穴が沢山空いた大きな箱が置いてある。 「装置のボタンを押してみてください」  先生に言われて、装置についているボタンを押すと、 「この商品が欲しい人!」  という音声が流れてきて、 「はい!」 「はい!」 「はい!」  という声とともに、箱の全ての穴から手のオブジェがにょきにょき出てきた。 「ひえー! なんか怖い!」 「ハイハイ商法の注意喚起で作りましたからね。ちょっと怖くしました。発売すると詐欺商法に利用されちゃうかもしれないので、ここ限定の展示作品にしたのです」  先生は得意気に言った。 「先生、ただでは転ばないですね……」  この『ハイハイ商法再現装置』を売ったところで、これを買って詐欺商法に利用する人がいるのか?という疑問はあるが…… 「涼くんにも、できれば見せてあげたかったですね」  先生は少し寂しげに言った。 「あ、そうだ先生。涼くん、今うちの画材屋でバイトしてますよ」 「えっ? なんで涼くんが画材屋に?」 「それが……」
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