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そんな庄野の怒りはお構いなしに、周囲は馬鹿みたいに面白がって口々に「見た」と言い出した。
「わたしも見た」
なんと万田春香も同調して「見た」と言い出した。彼女のことは何をやったとしても無視しようと決心したことを忘れて、つい口出ししそうになってしまった。もう無関係なのだから、黙っておこう。
おれが黙っているのをいいことに、彼女はさらにまわりに調子を合わせて言いだした。
「二人で会ってたよね。思い出が忘れられないんじゃない?」
「未練、未練」
何かが切れてしまったおれは、彼女を怒鳴りつけた。
「おまえは、嘘をついてまで、馬鹿なやつらの仲間に入りたいのか。おまえ、一年前はこの高校にいなかっただろ」
彼女はバレちゃったとでもいうように、えへへと笑った。
「ほんと、最低な人間だな。だいたい、おまえらもそうだ」
おれは周りを見渡して言った。
「ありもしない噂話なんかするな! おれも庄野も、亜妃さんとは何もない! 以上!」
運動部の部員たちも、通りがかりの生徒たちも、興ざめしたというように散り始めた。
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