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万田春香も平行線上にいる限りはいいのだが、こうやって頻繁に迷惑をかけてくるのが腹立たしい。彼女は、この春に転校してきたばかりだが、おれに恨みでもあってわざとやっているのかと疑いたくなる。
ついこの前も、前が見えないほどの段ボールを抱えて階段を下りてきて、危ないなと思って下から見ていたら、案の定、階段を踏み外しておれの頭上に段ボールを落としてきた。本人の話によると、急に用事ができたとかで急いでいた庄野に頼まれて運んでいたらしい。一歩間違えば大怪我をしていたと諭しても、彼女は謝りながらヘラヘラと笑っていた。
とにかく、万田春香という人間は、気が弱く、押しが強い奴に逆らえずいいなりになってしまうのだ。
そっと小さな声でおれに謝りながら、ボールを拾おうとかがんでいる万田春香の腕をつかみ、無理やり立たせた。
彼女は怯えた目でおれを見上げた。
「……おまえさ、毎回どうしてこういうことになるか、わかる?」
彼女は黙って首を横に振る。
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