3人が本棚に入れています
本棚に追加
この高校で知っている人はほぼいないと思うが、実は、万田春香は幼馴染だ。
幼稚園から、彼女が引っ越した小学校1年にかけての数年間だったが、毎日のように遊んだ記憶は強く残っている。一人っ子で、両親が小さな会社を経営していて忙しかったため、幼い頃はいつも寂しい思いをしていた。そんな時期に一緒にいたからだろう。
急に彼女が引っ越して会えなくなり、しばらくは寂しかったが、そのうちひとりで過ごすことにも慣れたし、その方が楽だと思うようにもなった。でも、彼女との楽しかった思い出はずっと心に残っていた。
だからこそ、10年近く経って、思いがけず彼女に再会したときは、わりとうれしかったし、親切にしようと思った。大きめのメガネに髪をうしろでひとつに縛った、まじめ一直線のような姿は、想像していたのとかなり違っていたが、化粧っけのないところが、むしろあの頃を懐かしく思い出させた。あの頃の彼女はすごく物知りで面白い子だった。
ところが、すぐに、人にいいように使われてただ笑っているような卑屈な人間だとわかり、かなりショックを受けた。これがあの子だとはとても信じられなかった。
最初のコメントを投稿しよう!