「難攻不落の男」を落とした女

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 無視すればいいのだが、なにかと目のつくところでやらかしてくるので、つい怒ってしまうのだ。  彼女が編入してきてすぐに声をかけたが、彼女はほとんど覚えていないようで反応が薄かった。おれは思い出を美化してしまっただけで、本当はその程度の仲だったのだろう。そもそも人は変わるものだし、いいかげんもともとそういう人だったと認めて、これからは何があっても無視しよう。  ここ数日、どうもこっちを見てこそこそ話す生徒がいる。  手近なヤツを問い詰めたところ、いつのまにか、おれが亜妃さんと付き合い始めたという話になっていた。  結局、根負けして、亜妃さんとパーティーに行った。少しだけ顔を出して、あとはひとりで帰ってきたけど。つきあっているわけではないとあのとき言ったのに、きっと彼女の仲間はあることないこと言いふらしているに違いない。  放課後、体育館のあたりでちょうど彼女を見かけたので、捕まえて問い質してみた。  すると彼女はとぼけて言った。 「えー? そんなの知らない。わたしだって、ちゃんと言ったんだよ。真司くんは彼氏じゃないって」 「それなら、それで、今後噂を聞いたら、ちゃんと否定してよ」
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