「難攻不落の男」を落とした女

8/12
前へ
/12ページ
次へ
「でも、噂って広まるの早いじゃない。いちいち否定するのも面倒だから、ほんとに付き合っちゃわない?」 「おれは面倒だからじゃなくて、好きだから付き合いたい」 「え、やだ、まじで? どうしよう」  亜妃さんの引き気味の驚いた顔を見て、もしかしたら言い方を間違えたかもと思った。 「そうじゃなくて、仮定のはなし……」  そのとき、突然、バンッという音がして、目の前にバレーボールが弾んで転がっていくのを見た。  ボールが飛んできた方向を見ると、バレーのユニフォーム姿の庄野が体育館の入口に立って、いつもの人懐っこい笑みを浮かべながらこちらを見ていた。 「やっぱり噂は本当だったんだな! おまえ、やったな!」  わざとなのか、庄野は大声でそう言って拍手をした。聞きつけたバレーやバスケ部の生徒たちが体育館からわらわらと出てくる。 「みんなで二人を祝福してやろうぜ!」 「胴上げでもするか?」  お調子者の庄野の扇動で、本当に胴上げしそうな勢いで騒ぐ。   その騒ぎを聞きつけて、通りがかりの生徒まで集まってきた。  こういう状況になるといっそう調子に乗るのが庄野という男だ。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加