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彼――橘修人さんはアンロックというクリエイティブエージェンシーのトップ2であり、デザイン部門の責任者(CCO)だ。
何を隠そう。
私はこの人に憧れてデザイナーを目指した。もちろん新卒時も彼のいるアンロックを第一志望にしていた。
だがかすりもしなかった。アンロックは大手ではないが、実力派デザイン集団なんて呼ばれており技術もトレンドも常に最先端。非常にレベルが高いことで有名で、簡単に門をくぐることはできないのだ。
それでも頑張っていればいつか橘さんと同じ舞台に立てると信じて頑張ってきた。そんな憧れのデザイナーから、声をかけられて地球がひっくり返るほど驚いた。
夢みたい、と思った。
橘さんは初めて声をかけてくれた時『渡瀬さんの最近の活躍を見て、過去に落としてしまった見る目のなさを嘆いた』とまで言ってくれた。そんなの、一気に舞い上がる。報宣堂で嫌なこともあったがこれまで真面目に頑張ってよかった、と思った。
「課題できた?」
入社の際には課題提出が義務とされているらしいので私も習った。
お題は『自由』。好きにしていい分、逆に難易度が高い。
「はい!」
「自信のほどは?」
「もちろんあります」
作品をプレゼンする際、絶対に謙遜しない。自分の作品が世界で一番最高だと言ってやれるのは自分だけ。自信がないものを選んでくれる人はいない。
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