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対峙した人物が、まったく想定外の表情をしていてぎくっとする。
「……」
歪んだ顔。それも大の大人の男が初対面の人間にここまで露骨に嫌そうな表情をする? というレベルのもの。
私を鋭く捉えるきつい目線。そして、鉛のような重い無言。
歓迎の空気ではないのは一目瞭然で、どうしていいか分からず橘さんを見るが彼も同じように戸惑っている。
「総二郎?」
「この女は、うちにふさわしくない」
神楽社長の第一声は、はっきりとした拒否の言葉だった。
あの噂だ。
神楽社長が何を言っているのか、なぜたった一目で拒否されているのかすぐに分かった。
「あの噂は事実無根です! 話を聞いていただけたら――」
「興味ない」
弁解をしようとするが取り付く島もなくて口をぱくぱくさせる。
彼は私の存在を無視し、橘さんに向いた。
「入社してくるのがこの女だと知らなかった。知ってたら反対した」
「え……彼女を知らないわけじゃないよな? で、反対ってどうして?」
「そのままの意味だ」
「はぁ? 今、うちにはデザイナーが必要だって話したよな?」
「デザイナーは必要。でもこの女はいらない」
あまりの嫌われっぷりにこの人に何かしてしまったのかと考えるほどだったが、間違いなく初対面である。
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