1.最悪の男

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「クリエイターの採用権を持っているのはCCOの俺だよ」 「最終的な総合判断はCEOの役目」 「総二郎が聞き入れられないなら退職も辞さない。だってそれじゃあなんのための権限なのか分からないし俺の立場がないだろ?」 たたた退職っ!? 共に表情はクールだが、話が危険なところまで発展してしまっている。おろおろしている場合じゃないと、慌てて割り入った。 「神楽社長がそうおっしゃるなら仕方ないと思います。ただしきちんと理由を説明していただかないと、納得できません」 「理由? 人間性がそぐわない。それ以上話す義務がある?」 ううっ……! ばっさり斬られそれ以上の反論ができない。 そんな私を庇うように橘さんが一歩前に出る。 「悪いけどもう入社処理は済んでるんだ。客観的かつ社会通念上相当の理由がない場合、今から採用を取り消すのは違法にあたる」 そう、入社処理は済んでいる。橘さんの言う通りでこのタイミングでの解雇はよろしくはない。 せっかく橘さんと同じ会社に入れたのに、人生捨てたもんじゃないって喜んでいたのに。 辞めたくない……! 神楽さんは私にもう一度嫌悪の視線を送ると、不愉快そうに舌打ちをした。錐のような鋭い視線を向けられ怖すぎて固まる。 「直近の社内コンペに参加しろ」 「え……」 「クライアントに選ばれなかった場合、試用期間で切る。他の仕事は一切するな」 そう言って会議室を出て行った。 神楽総二郎の第一印象――最低最悪な男。
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