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彼は持ち前の足の長さでどんどん距離を詰めて来る。抜かされるのも癪なので必死に階段を登るがオフィスのある3階の手前でついに横並びになった。私はぜいぜい肩で息をしているのに神楽さんは涼しい顔をしているのが憎たらしい。
そのまま私の存在を無視して追い抜かして行くのかと思いきや。
「どうやって橘に取り入った?」
「はい?」
睨まれ思わず低い声が出た。なんだ、その質問は。
「耳まで悪いのか?」
はああああ!?
ぶわっと、体が怒りで膨れ上がった。
「どうやって取り入ったか聞いてるんだよ」
なんで枕営業したみたいに言われなきゃいけないわけ!?
それでつい反論してしまった。
「アンロックは、偉い方に気に入られれば入社できるような程度の低い会社なんでしょうか?」
「なんだと?」
「だって社長のおっしゃる通りでしたら、そういうことになってしまいませんか?」
私、間違ったこと言ってます?
「はぁ……橘はよりによってなんでこんな女を……本当に理解できないな。史上最悪の悪手だ」
真正面から正々堂々と侮辱され、挙句橘さんまで侮辱され、毛という毛が逆立ちそうなくらいムカついた。
「コンペに落ちて早くいなくなれ。1秒でも耐え難い」
むかつく! 本気でムカつく!
ぎりぎり拳を握る。
許さない。
絶対にコンペで勝ってこの男をぎゃふんと言わせてやる!
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