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「B社の案件は、渡瀬の案が選ばれた」
私、渡瀬 佐代は張り詰めた空気の中でその言葉を聞いた。
願っていた通りの結果に飛び上がりたい衝動に駆られたが、深呼吸をして『ありがとうございます!』とお辞儀をする。誰ともなしに起こった拍手に包まれた。
「いいアイデアだった。おめでとう!」
「ここ最近負け知らずじゃないか!」
「広告賞もいけるんじゃないのか」
次々と暖かい賛辞が届く。
専門学校卒業後、大手広告代理店の報宣堂に入社しデザイナーをやって今年で5年目。最初こそ激務や代理店の風習についていくのが精一杯だったが、ここ最近は社内コンペで勝利する機会が増えた。
「佐代ちゃん、A社に続き今回もコンペ勝利! もはや飛ぶ鳥落とす勢いだね!」
仲良し同期の美智香が笑顔で近づいてきた。
「ありがと!」
自分のアイデアがいろんな人の手によってひとつの作品になり、ふとしたところで目にする。寝る暇もないほど忙しいが、この仕事が本当に好き。
まだまだ上にいける。まだまだ新しい世界を見れる。
そして、憧れの人に近づける。
今度こそはって、信じていた。
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