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 ふうとため息をひとつ吐き出した。安堵のため息か、それとも落胆のため息か。知らない間にまた新しい彼女ができていたことにショックを受けつつ、けれどまた長続きしなかったことにほっとしている。高校生の頃に出会ったわたしたちはいつのまにか二十代も半分を終え、同級生には既婚者もちらほらと現れ始めた。アヤちゃんだっていつか結婚してしまうかもしれない。そうなってしまったらもう、わたしとは会ってくれないだろう。確実に近づいてきている終わりを、その先を、考えないようにする。  ついこの前まで蝉がうるさく鳴いていたと思ったのに、気づけば乾いた風が頬を撫で、ほんのりと甘い秋の香りがする。カーディガンを羽織って買い出しに向かう。アヤちゃんの好きなオムライスを作るために卵は欠かせない。ひとつだけ古い卵が残っていたけれど、いつもふたつ使うし、半熟にするから新鮮なほうがいいだろう。  アヤちゃんが来る前にケチャップライスだけ作っておく。チキンライスではなく、ツナを入れたケチャップライスをアヤちゃんはいたく気に入っている。
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