小さな幸せ

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小さな幸せ

 毎朝乗る電車。  ガタガタと揺れる車内。足をつたって感じる  電車の速さ。  毎日乗っても慣れない感覚に時折心地よさを  感じる。    定期テスト前の僕は睡魔が目の前でチラチラ  と舞っていた。 (眠たい…)  後少しで夢の世界に入るところで声が聞こえ  てくる。 「お兄ちゃん!外きれい」  そう猫じゃらしを持った小さな少年は声を  上げる。  向かいに座っている兄弟がワイワイと騒いで  いた。  近所ではもう聞くことのなくなった子供の  元気な声。  少し前までは公園も賑わっていたのに、最近  は誰も寄り付かなくなった。  インフルエンザの時期だからだろうか。  椅子の上に膝を立て、窓の外を見て仲良く話  している。  向かいに座っていた僕はその姿を羨ましく  思い、見入ってしまう。  少年が振り返る。目がパチリとあった。    少年は嬉しそうに僕に笑いかける。  そして手を振ってくれた。可愛らしい。  こんな時期が僕にもあったのだろうか。  母は今入院している。  もうすぐ生まれる弟と。  その弟もこんなふうに笑うのだろう。  あぁ、早く会いたいな。
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