夏青同盟3

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夏青同盟3

 小学生の時は空手道場に通っていたが、中高とサッカー部。中学の時はそこそこだったけど、高校は定員割れしている弱小部である。それでもボールを追いかけてグラウンドを駆けまわるのは楽しい。少人数なので和気藹々と先輩後輩でやっているのでありがたい。部活が終わって帰宅、お風呂に入ってさっぱりして晩御飯を食べて部屋でくつろぐ。あと30分したら宿題でもやるか。スマホが着信音を告げる。セーターだった。私はぱっと跳ね起きた。 「なあに」 「あの……大事な話があるんだ」 「わかった。下に降りるね」  結構、深刻そうな話だ。すぐにわかる。二人で連れ立ってそっと夜の街に出た。夜の街はよそよそしく、まるで知らない外国のように魅惑的だった。たくさんの家々から灯りが漏れている。こんなに自分たちの街に人が住んでいるんだ、とおもうとなんか奇妙な気分になる。 「公園に行こう」 「うん」  街灯の青白い光が公園をなんだか非現実の世界のように浮かび上がらせていた。夜風が涼しい。 「あの……」 「うん」 「好きな人がいるんだ」 「あ、そう」 頭がくらりとする。軽い眩暈。 「あのね」  意を決したような眼差し。まさかの坂で。 「あの」 「うん」  えーと。ちょっと急すぎるから。 「す、好きなんだ」 「う、うん」 「付き合っている人がいる」 「え」  あれれ。 「だから、ナツだけには知っていてほしくて」  なんか風向きが変わった。安心したような、がっかりしたような。どこの誰なんだろう。 「私の知っている人?」 「知らないと思う」  あ、そう。なんかえらく寂しいような気がした。 「でね」 「うん」 「あの、男なんだ。好きな人」 「え、そうなんだ」  セーターは下を向いた。 「気持ち悪い、とか思う?」 「思わないよ」    なんか、納得した。男の人の臭いがとにかく大嫌いな私が、幼馴染のセータだけは大丈夫なのも。そうか、男の人が好きだから、大丈夫なんだな。私は男の人の臭いが嫌い、という他に男の人がそのものが嫌いなのだ。そして私に向けられる視線が嫌なのだ。私は、それほど顔がよくない。でも男子に注目される。なぜなら胸が大きいから。「あいつ顔はともかく胸だけはでかいよな」と中学生の頃、何度も噂された。別のクラスの奴まで見にきた。始終男子とひっついて仲良くしている女子にも笑われた。マジむかつく。ぞわぞわして気分が悪くなる。でも、セーターはそんなことは一度も言わないし素振りさえない。 「ありがとう、ナツならそう言ってくれるとおもった」 「セーターが好きな人ならそれでいいんだよ。周りに何を言われようがさ」 すごく月並みな励ましの言葉。 「でも、うちの学校、恋愛禁止だし、噂をたてられたらやばいからなるべく黙っていた方がいいかも」 「うん、そのつもり」  そう、うちの学校は今どき、恋愛禁止なのである。もちろん隠れて付き合っている子たちはいる。みな、見て見ぬふりしてあげるのがルール。男女でもたいへんなのに男の子同士なんて何をかいわんや。茨の道だ。 「ま、大丈夫だよ。私がセーターを守るから」 「ありがとう。ちょっとカッコ悪いけど」  照れて頭を掻くセーター。そのあと、他愛のない話をして家にかえった。ふと思う。私は隣の幼馴染、セーターが好きだったのかな。でもきっとその「好き」とこの「好き」は違う。私とセーターが付き合っている並行世界はまるで想像がつかない。
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