2 秘密の交換

1/7

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ

2 秘密の交換

 さっそく次の日にお守りを持ってくることになった。  小学生当時になにをあげていたか忘れてしまったので、何にしようかとけっこう考えた。五十嵐くんのことだから毎日でも請求してきそうだ。あまり金額が高いものは用意できない。  コンビニに寄ってうんうん呻った結果、簡単なものに決めた。  登校すると、なぜか女子からのぶしつけな視線攻撃を受けた。わたしのことを遠巻きに見るだけで、誰も話しかけてこない。きっと原因は五十嵐くんのことだろうけれど、まさか二人でいるところを見られてしまったのか。でもやましいことなどしていない。わたしは視線から逃げるように教室に入った。 「おはよう」 「おはよ優ちゃん」  友だちはいつも通りで、教室内でもさほど嫌な視線は感じない。ほっとしてカバンを開ける。中には、五十嵐くんのために用意したお守りがある。これを渡してどんな顔をするのか想像すると、なんとなく気持ちが浮き足立っていた。五十嵐くんと二人になるのをあんなに嫌がっていたのに、自分でも不思議だ。  小学生の頃はお守りを渡すとものすごくいい笑顔をしてくれた。大抵泣いている時に渡すのだけど、涙を瞳に溜めながらも満面の笑み。わたしはその顔を見るのが好きだった。最初は励ますためにお守りをあげていたのに、途中からは五十嵐くんの笑顔が見たくてあげていたような気がする。  昔のことを思い出すと、心の奥がくすぐったくなった。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加