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お守りの交換から一週間が経った。
「優先輩、今日もありがとうございます」
「う、うん……」
今日も生徒会の仕事を手伝ってほしいと呼び出され、二人で図書室にいる。相変わらず校内にしてはひと気のない場所だった。ここ最近毎日だ。生徒会長として書いた文章を見てほしいと言われたり、校則について相談されたり、校内の設備について意見を聞かれたり……様々だ。
わたしは呼び出されるたびに断ることもできず、話を聞きアドバイスを伝える。実際生徒会の仕事の一端にふれられることは面白かった。学校や生徒にとっての重要な事柄について考えることは新鮮だ。改めて五十嵐くんが大変な立場でいることを理解した。それでさらに人気者なのだから本当に、わたしとは大違いだ。
「優先輩の黒髪きれいですよね。さわっていいですか?」
手渡されたプリントを眺めていると横に座っていた五十嵐くんの手が伸びて髪をひと房手にとる。
「わっ……ってもうさわってるじゃない」
「さらさらだ」
「や、やめてよ」
ボブヘアのせいで、五十嵐くんの手が顔に近い。お守りを交換するようになってから、前よりも距離が近い気がする。そのたびにわたしは心が揺さぶられていた。
「……先輩、今日のお守りありますか?」
「う、うん」
お守りを渡すのも日課になってしまった。想像通り、毎日渡している。もちろん五十嵐くんからももらっている。彼のことを好きだとも伝えてないのに甘んじて受けいれてしまっていいのかと思いながら、断ることもなく黙って受け入れていた。
スカートのポケットからキャンディを取り出して一つ手渡した。五十嵐くんは「やった」とつぶやいてから優に近づいてくる。くちびるが頬にふれそうになってぎゅっと目をつむった。
いつもならすぐにふれてくるものがしばらく待っても、感じなかった。そろりと瞼をひらくと、至近距離で五十嵐くんと目が合った。
「先輩、俺のキス待ってて可愛い」
「ちょっと、なんで、やだ」
「俺にキスされてもいいんですね」
何もしないで目をつむった自分のことをじっと見ていたのだろうか。考えるだけで五十嵐くんのお守りを大人しく待っていたなんて恥ずかしい。
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