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「五十嵐くんイジワルだよ」
顔を両手で覆って隠す。自分の顔が赤くなっているだろうということは想像できた。だってこんなに熱い。
「ごめん、先輩。手どけて」
「やだ、ひどい」
「ごめんってば」
「あっ」
手を引き剥がされて、目が合う。あ、と思った時には五十嵐くんは近づいてきて、額にキスをされた。それから頬にも。
「先輩可愛い」
あまりに甘い表情をするので何も言えなかった。掴まれたままの手は五十嵐くんの体温が伝わってくる。ひどく熱い。ここがどこかと忘れそうになる。
「2回はルール違反だよ」
「えっ」
「いま2回したでしょ。私はキャンディ一つしかあげてないもん」
「お守り二つってことで」
本当はルールなんてない。わたしが勝手に一つあげているだけだ。だけど毎日お守りを交換していくなかでなんとなく暗黙の了解みたいなものができている気がした。
キャンディ一つあげるから、一回頬にキス。
「じゃあ次は五十嵐くんからはいらない」
「そ、そんなあ」
情けない声を出す。
さっきまで真剣に校則について話していた人とは思えない。
強がって言い返したものの、心臓はもうずっとバクバクと高鳴っている。うるさいくらいだ。初めて頬以外のところにキスをされてこんなに動揺するなんて。あまりに経験が浅すぎて恥ずかしい。それに比べて五十嵐くんはなんでもないような顔をして笑っている。
「誰にも見られてないといいですね」
「あ、当たり前でしょ!」
くすくすと笑う五十嵐くんがあまりに余裕あるので腹が立った。好きだと言ってきたのは五十嵐くんのほうなのに、振り回されている気がしてならなかった。
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