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「先輩!」
「や、やだなんで走ってくるの」
とっさに逃げようとして、すぐに掴まってしまった。それだけならまだいいのに、後ろから抱きしめられてしまう。
「つ、掴まえた」
「ちょ、ちょっと」
周りの目が怖い。まだ生徒はいるのだ。現に、女子生徒たちの驚いた顔がこちらを見ている。
「優、先輩っ」
くるりと身体が反転して、頬を包まれる。
「ひゃっ……ン」
キャー! と、どこからか女子生徒の黄色い声が耳に入った。
まだ生徒が残る校庭で、五十嵐くんにキスをされた。長くはないけれど、キスをしているとはっきりわかるくらいだ。くちびるがゆっくり離れていくと、五十嵐くんは、告白の時のような赤い顔をしていた。
「な、ななな、なにするの! み、みんなに見られた」
「いいんです、もう。もうどうでもいい。好きです」
「わ、私はどうでもよくない!」
「いいから来て、先輩」
興奮気味の五十嵐くんに腕を掴まれて走り出す。足がもつれそうになりながらわたしもつられて走った。
「あ、か、帰るのに!」
「いいから!」
何度か五十嵐くんの名前を呼んだけれど、聞いてはくれなかった。
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