4 たくさんのキャンディ

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「先輩!」 「や、やだなんで走ってくるの」  とっさに逃げようとして、すぐに掴まってしまった。それだけならまだいいのに、後ろから抱きしめられてしまう。 「つ、掴まえた」 「ちょ、ちょっと」  周りの目が怖い。まだ生徒はいるのだ。現に、女子生徒たちの驚いた顔がこちらを見ている。 「優、先輩っ」  くるりと身体が反転して、頬を包まれる。 「ひゃっ……ン」  キャー! と、どこからか女子生徒の黄色い声が耳に入った。  まだ生徒が残る校庭で、五十嵐くんにキスをされた。長くはないけれど、キスをしているとはっきりわかるくらいだ。くちびるがゆっくり離れていくと、五十嵐くんは、告白の時のような赤い顔をしていた。 「な、ななな、なにするの! み、みんなに見られた」 「いいんです、もう。もうどうでもいい。好きです」 「わ、私はどうでもよくない!」 「いいから来て、先輩」  興奮気味の五十嵐くんに腕を掴まれて走り出す。足がもつれそうになりながらわたしもつられて走った。 「あ、か、帰るのに!」 「いいから!」  何度か五十嵐くんの名前を呼んだけれど、聞いてはくれなかった。
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