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「ごめん。先輩、ごめんなさい」
「ん、ぁ、ぅ」
誰もいない生徒会室と逃げ込み、入った瞬間に五十嵐くんからキスの嵐だ。何を言うこともできずにくちびるを塞がれていた。激しい、甘いキス。舌の根を吸われてまるで食べられてしまうくらいだ。
放課後の室内は真っ暗だ。でも五十嵐くんの表情だけははっきり見える。泣きそうになっていた。
「また我慢できなかった」
そっと五十嵐くんの頬に手を伸ばした。泣きたいのはわたしのほうだったはずなのに五十嵐くんの顔を見ていたら涙は引っ込んでしまった。
「だって、先輩を泣かせちゃったし、嫌われたと思って会うの我慢してたら……ゲタ箱あけたらキャンディたくさんくれるから。俺、たくさんキスしなくちゃ。キス、したい」
一度離れたくちびるは名残惜しむようにしてまたくっつく。この前初めてキスをしたばかりなのにもう何度しただろう。あんなに戸惑っていたキスだけど気づいたらわたしも五十嵐くんの制服をぎゅっとにぎりしめて受け入れていた。
追いかけてきてくれた彼を思い出しながら。
「ん、ん……キャンディ、いつも持ってきてるんだからね」
「はい。うれしい」
「……五十嵐くん、あのね」
会話の合間にキス。
「……ん、はい」
「好き、だよ」
五十嵐くんの動きが止まった。唐突すぎただろうか。
「嘘だ」
「う、嘘じゃない!」
「だって何回も断られたし、この前だって、泣いて……」
「あれは急だったからびっくりするよ」
「……ごめんなさい。でも本当に?」
「……本当は、五十嵐くんはすごすぎて私なんか釣り合わないから、好きだけど我慢しようって思ってた。目立ちたくないし」
今も本当はちょっと怖い。人気者の生徒会長とつき合うことになると知られたらあの校内新聞の騒ぎどころではないだろう。でも、やっぱりもうここまできたら我慢しているのもバカらしい。
「でもやっぱり好きだよ。もう、目立っちゃったし」
校庭のキスを見られてしまったからもう明日には学校中に広がっているだろう。新聞部に写真を撮られていなければいいのだけど。
「何度も断ってごめんね。五十嵐くんが前よりかっこよくなってて、遠い存在になったから……自信がなくて」
「……先輩っ」
真正面からぎゅっと抱きしめられる。覆いかぶさるみたいに。
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