3人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
「優先輩、好きです」
数ヶ月前、めずらしく緊張した面持ちで五十嵐くんが言った。
小学生の頃出会った『海人くん』は、高校生になって『五十嵐くん』になった。高校生になって彼のことを知ったのは、彼が生徒会選挙の演説の時だ。最初は同姓同名かと思っていたが、母親に聞いたらどうやら同一人物らしいことを知った。さらに彼はわたしのことなど忘れていると思ったら、生徒会長に就任してすぐにわたしに会いに来た。人のいない教室へ呼び出され、何かと思っていたら突然告白をされた。
「……だって、今日はじめて話したのに」
「初めてじゃないです。小学生の時に話したの覚えてないですか?」
「覚えてるけど……小学生の時でしょ?」
別人のようにかっこよくなった『五十嵐くん』に告白されている現実が受け入れられない。どこかに誰かが隠れていてドッキリでもしているのかと思うくらいだ。でも五十嵐くんがそんなことをするような人ではないことはわかっている。
現に、彼は真剣な表情のまま頷いた。
「だめですか? ずっと好きだったんです」
「だめっていうか……急すぎてよくわからないよ。ごめん」
わたしはそう答えることしかできなかった。小学校以来話をしたこともない彼に好きだと言われて困惑しないはずがない。
「そっか……急だったか。ごめんなさい。じゃあこれから決めてください!」
曖昧な返事に五十嵐くんは食い下がった。どうして小学生の頃に会っただけの相手に告白ができるのかと不思議だ。いつから好きだったのか、とかいろいろと聞きたいことはあったけれど、それよりも人生初の告白に動揺していてそれどころではなかった。
最初のコメントを投稿しよう!