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「放課後、生徒会の仕事を少し手伝ってくれませんか?」
「……どうして私が」
急に真剣な表情で小声になって距離が縮まり、余計にドキドキした。手首を掴んでいる五十嵐くんの大きな手も、わたしを動揺させる。
「先輩、頭いいから。俺の書いた文章を読んでほしいんです」
「ほ、他に頭いい人いるでしょ」
「先輩がいいんです!」
「ちょ、っと大きな声出さないで」
もうすでに周りを見るのも怖い。絶対にじっと見ているか、見て見ぬ振りをして聞き耳を立てているに違いない。
「いいですか?」
「わ、わかったから」
この場から逃げたくて適当に返事をして手を振り払った。
「放課後迎えに来ますからね」
大きな声ではなく、背中に優しい声をかけられた。わたしは焦って自分の教室に戻った。いろんな人に見られたせいで春なのに汗をかいていた。
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