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僕はいわゆる本の虫で、他に趣味という趣味もなく、空いた時間はひたすら本を読むことに時間を費やすような人間だった。
友達がいない訳ではなかったけど、同じ趣味を持つ友人はいなかった。
大学生になって間もない頃、アルバイト先に書店を選んだのは、趣味の合う仲間が見つかればいいなという思惑あっての事だった。
そこで、彼女と出逢った。
はじめ僕は、心の中で彼女の事を『本屋の君』と呼んでいた。
化粧気のない清潔感のある佇まい。
艶のある真っ直ぐな長い黒髪。
ゆっくりと静かに話す、低いトーンの声。
文庫本のページを捲る華奢な指。
彼女が高い棚に指を伸ばすその姿は、そこだけ絵画のように周囲から切り取られ、淡い光を帯びているようだった。
僕が彼女に惹かれるのに、そう時間はかからなかった。
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