僕と十三人の恋人たち

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 ある日、街で彼女を見かけた。  僕は最初、それが彼女だとわからなかった。    彼女の髪の色は普段よりずっと明るい茶色をしていて、流行の化粧を施し、もう着る機会などない筈の制服を着ていた。  そして彼女の隣には、私服の中年男性。  いつも静謐な笑みをかたどる彼女の口元は、見たこともないくらい溌剌と動き、何かを語っている。  彼女はその男性と連れ立って、ファミリーレストランに入って行った。  僕は少しの間立ち尽くした後、二人の後を追ってその店に入った。
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