僕と十三人の恋人たち

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 二日後、バイト先の書店で彼女に会った。  土曜日で学校は休みだ。昼早々に出勤すると、休憩室に彼女がいた。    小さな窓から差し込む弱々しい光を受けて、彼女の黒髪がじんと控えめに艶めく。  テーブルに肘をついて『女生徒』の文庫本を開くその姿は、いつもと何ひとつ変わらない、僕の知る本屋の君だ。  僕はそれに安堵すると同時に、どこか憤りに近い感情が湧き上がるのを感じた。  腹の奥底で、どろりと、重く。    そしてそれは多分、僕の表面に表れていたのだろう。  彼女はファミリーレストランで見せたのと同じ薄い笑みを、僕に向けた。  ぱたんと文庫本を閉じて、代わりに唇をやんわりと開いて、動かす。  「店長から伝言。今日、休憩三時からだって」    何の変哲もない業務連絡だ。  何を話すのだろうと緊張していた僕は、肩透かしを食らい脱力した。    「私は三時までなの。良かったら外で少し、話さない?」  拍子抜けした後の不意打ち。  僕はぴしゃりと背筋を伸ばして、何度も頷いた。
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