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「おからのクッキーなんだ。あと、こっちはオートミールのクッキー」
おから?オートミール?
それって、カロリー控えめのダイエット用のクッキーっていうこと?
まさか……。私のために?
「まだ、研究途中で味には自信がないんだけど……食べてもらえると嬉しい」
「研究途中?……え?誰が?」
まさか書記の1年生の子が私のためにダイエット用クッキーを研究してくれてるの?
「もちろん、僕だけど」
は?もちろん……僕って。
「花木田君がクッキーを……あの、美味しいクッキーを作ったの?」
花木田君が笑った。
「美味しいって言ってもらえてすごくうれしかった。ちゃんとしっかり味わってくれて、ちょっとした違いにも気が付いてくれる。そして、こうしたらいいかもとアドバイスまでしてくれて……」
「すごい……あんなに美味しいクッキーを作れるなんて……天はやっぱり何物も与えちゃうんだ……」
ななみんがぼそっとつぶやいた。
花木田君は私から取り上げた春限定イチゴ味のスナックを見た。
「美優ちゃんはイチゴが好きなの?頑張って太らないイチゴのクッキー作るからさ………食べてくれないかな……。その……僕は……」
「私のために……私なんかのために、クッキーを作ってくれるの?」
びっくりして尋ねると、花木田君がちょっと怒った。
「私なんかじゃないよ。美優ちゃんは黄金の舌を持ってる特別な人だよっ!僕は美優ちゃんに食べてほしいんだ」
私の舌が特別?
モブの私にも、特別なんてあったの?
「ねぇ、お願いだよ。美味しそうに食べる顏が見たいんだ。僕は、美優ちゃんの……あの顔に……その……」
花木田君が言いにくそうに言葉を濁す。
ななみんが、耐えきれないといった様子で机をたたいた。
「私がいないときに続きはお願いします。食べよう、食べよう。ね?美優、ほら!花木田君は例の生徒会の仕事があるんじゃないの?行く前に食べた感想教えてあげなよ!」
ななみんがおからクッキーを私の口に突っ込んだ。
あ。
ふんわりときなこの香りが広がる。クッキーだけど和風テイストだ。甘味は黒蜜でつけてあるんだ。
もともとおからはきなこと同じ大豆だから、合う。
「きなこと黒蜜のクッキー、初めて食べたけれど……とてもおいしい」
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