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もう一度チョコレートとポテチを勧めると、ななみんがふにゃりと笑った。
「あはは、美優は悲しいことや腹が立つことがあっても美味しいもの食べたら復活しそうだね」
ななみんの言葉に、顎の下の肉をちょっとつまんだ。
「この辺りは怒りの成分でできているかもしれない」
「ぷっははは、いつも幸せそうに食べてるんだから、美優の体は幸せでできてるんだよ」
私の体は幸せでできてる?幸せな気持ちで食べたものが、私の体を作っている……。
「ななみん、ありがとう!なんかその言葉好き!」
「ぷっ」
唐突に聞こえた噴き出す声に廊下に目を向ける。
「うわっ、笑われてるのって、私たち?」
ななみんが私に顔を寄せてひそひそと話をする。
「悪い、馬鹿にしたわけじゃないんだ」
ぎゃぁ、ななみん、今の声、丸聞こえだよ。
廊下側の机で話をしていたため、開いていた隙間から声が廊下に駄々洩れだったみたいだ。
がらりと廊下の窓が開くと、5組の花木田俊哉君が顔をのぞかせた。
「うわぁ、俊哉君だ」
クラスの女子が小さく歓声を上げた。
生徒会副会長の花木田俊哉くん。街で見かけたイケDKコーナーに写真が乗った花木田俊哉くん。学年順位がいつも5番以内の花木田俊哉くん。……私と比べてどれだけでも紹介するための言葉が出てくる。
モブとは対極の主人公だ。いや、生徒会長じゃなくて副会長というあたりが当て馬臭もするけれど、スピンオフでは主役に抜擢されるような使い捨てキャラでないことは間違いない。
つまり、不通に生活してたら関わるような人じゃない。
サラサラの色素の薄い髪。優しくきれいな目に、高すぎず低すぎない整った鼻。言い出したらきりがない完璧なパーツの数々。砂糖系イケメンだ。
「盗み聞きする気はなかったんだ。えーっと……」
そりゃ、モブの会話を盗み聞きなんてしても仕方ないし。
……それにしても、教室と廊下を隔てる窓ごしとはいえ、こんな至近距離で見下ろされると落ち着かない。クラスの女子たちの視線も痛いし。
早くどっか行ってと思っているのに、俊哉君は私とななみんの顔を見比べて小首をかしげる。
砂糖系男子のあざとかわいいしぐさに、女子からため息が漏れた。
「美優ちゃんはこっちだ」
私の顔を見て、俊哉君が微笑んだ。
……。
当たり。
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