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盗み聞きする気がなく聞こえてきた会話で、明らかにぽっちゃりしてる私が食いしん坊だと見破ったようだ。いや、簡単な問題ですけどね。
っていうか、初対面で、いきなり美優ちゃん呼びっ!流石主人公キャラは違うっ。モブの心臓に悪いから!
「ねぇ、僕も美優ちゃんの幸せな体作りに協力させて?」
は?な、な、何?
甘い顔で微笑んだまま俊哉君が手に持っている袋からクッキーを1枚取り出して、私に差し出した。
「あ、いただきます」
そういうことか。びっくりした。
素直にクッキーを受け取るとすぐに口に運ぶ。
「あ……紅茶のクッキーだ。甘さは控えめだけれど、紅茶の香りが鼻に抜けて味わい深くておいしい」
「ぷっ」
俊哉君が私の顔を見て笑う。というか、笑われた?
「本当に幸せそうな顔をして食べるんだね、美優ちゃんって。よかったら、残りもあげる」
廊下から再び手が伸び、机の上にクッキーの入った袋を置いて俊哉君は去っていった。
「嬉しい、すごくおいしいよ、このクッキー。ななみんも食べてみ」
ななみんが眉根を寄せて嫌そうな顔をしてる。
「あ、ごめん、お腹いっぱいだったっけ……」
「花木田俊哉……ちょっとモテるからって嫌なやつね」
「え?そう?」
クッキーを口に含むたびに紅茶の香りに包まれる。高校の教室で食べているというのに、英国風のお菓子屋さんで優雅にティータイムを楽しんでいる気持ちになる。
「あー、もう、お菓子をくれる人を、いい人認定しちゃだめだよ美優。いつか誘拐されちゃうよっ!」
「やだなぁ、流石にお菓子をあげるからおいでなんて言われても着いていかないし。っていうか、ななみんはなんでそんなに怒ってるの?」
ななみんが、机の上に置いたクッキーの入った袋を指さす。
透明な袋に、一口サイズのクッキーが10枚ほど入っている。
「これ、手作りクッキーでしょ?」
ああ、言われてみれば市販品なら原材料が書かれたシールが貼ってあったり、お店のロゴシールが貼ってあったりするか。あとシリカゲルとか入れてあったり。
「誰か、あいつのファンから差し入れもらったのよ。それをさ別の女の子にあげちゃうのって、無神経だと思わない?」
言われてみれば、確かに……そうかも?
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