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次の日。いつもの席でいつものようにお弁当を食べ終わり、いつものように鞄から食後のお菓子をとりだそうとしたところで、廊下の窓ががらりと開くと、ぬっと手が出てきた。
「え?」
手には袋に入ったクッキーがある。
顔を上げると、にこにこ笑顔の花木田君の姿があった。
「昨日のクッキー。美味しいって言われたのが嬉しかったって。これ、お礼」
ちゃんと伝えてくれたんだ。
お礼……?
「ありがとう」
素直に受け取ると、花木田君は廊下のから立ち去ることもなくまだ立っている。
「いただきます」
食べるところまで確認したいのか、また感想が聞きたいのかと思って、袋を開けてクッキーを口に運ぶ。
「あ……、これ、昨日のと違う」
私のつぶやきに、花木田君が小さく声を上げた。
「あ、まずいとかじゃないです。昨日とは紅茶の種類が違うような……違うかもしれませんが、昨日はダージリンとかオーソドックスな紅茶だったけれど、今日のはアールグレイ……かな?」
花木田君がポカーンと口を開いている。
「分かるの?」
「え?だって、ベルガモットの香りがするし……ねぇ?」
ななみんにクッキーを一つ手渡し同意を求める。
ななみんはクッキーを食べると苦笑いを浮かべた。
「分からないよ。美優ほど味の違いはふつうは分からないからっ!」
え?そうなの?
「ど、どっちが美味しい?」
花木田君が興奮気味に窓のさんに手をかけて上半身を乗り出してきた。
ちょ、近いよ。キラキラ主人公がモブ領域に入り込まれると心臓に悪いから。
「どっちか……というと、昨日の、かな……」
花木田君が少しがっかりした顔をする。
ん?もしかして、クッキーを作った子が昨日のよりおいしかったって言葉を期待していたってことかな?ああ、どうしよう。私って空気読めないよね!
「ち、違うの!今日のクッキーもおいしかったんだけど、ほ、ほら、えーっと、アールグレイってミルクティーに合う紅茶でしょ?だから、なんていうか、ミルク感がクッキーにもあったらもっと美味しいのかなぁって考えちゃって。えっと、ベルガモットの香りとミルクの香りが混ざると香りだけでも胸が幸福感で満たされない?」
ななみんがすかさず突っ込みを入れる。
「いや、それ美優だけ……」
そうかなぁ?
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